スピリチュアルとどう付き合うか
先日、ある用事までの時間をつぶすため、カフェを訪れたときのこと。
レアチーズケーキとアイスカフェオレを味わっていたところ、隣の席から気になるワードが聞こえてきました。
「私、スピリチュアルに結構興味あるんです」
…ほう。詳しく聞かせてもらおうか。と、心の中で呟き、我ながら悪趣味だなと思いつつ、気が付けば隣の男女2人組に聞き耳を立てていました。
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なぜに私のアンテナに引っかかったのか
それは数年前のこと、当時付き合っていた彼氏との関係が上手く行かなくなったことがきっかけで、スピリチュアルに片足突っ込んでいた時期があったからです。
「引き寄せの法則」「潜在意識」などについてネットで調べまくって、本も読んで、彼氏との関係を修復させようともがいていました。
今思えば滑稽な話ですが、当時は本当に必死で。ただ、心の底からスピリチュアルを信じ切っていた訳ではなく、半信半疑でした。こんなん周りに話したらドン引きされるわ…という冷静さだけは失っておらず、その時から今まで誰にも言ったことはありません。
何を信じるか信じないかは人それぞれですが「こういうことを本気で信じてると思われたくない」と思った時点で、私にとってそこまで信念をもってのめり込めるものではなかったのかもしれません。
唯一、物事の見方が変わった(ネガティブな面だけでなくポジティブな面にも目を向けるようになった)ことは、前向きに捉えています。スピリチュアルのお陰というよりは、心理学的な効果かなとは思いますが。この辺のお話はまた別の機会に。
そんな訳で、私が表向きにはひた隠しにしてきたスピリチュアリズムを堂々と語る隣の人に興味を引かれたのです。
冒頭の発言をしたのは女性のほうで、男性はそれを特段驚きもせずに聞いていました。
陰陽師、波動、龍が写った(ように見える)写真、新月の願い事、メモリーオイル等々、スピ界隈の本やネット情報でよく見かける言葉のオンパレード。まさか実際に耳にすることがあるとは。
ひとつ初めて聞いた単語があり検索してみると、どうやら自然派食品のお店のようでした。そこを訪れたことで「食の真実に目覚めた」というインスタグラマーもおり、さらに奥深い世界が広がっていました。
スピリチュアルと自然派食品って親和性が高いな…と、私がスマホを眺めている間にも話題の尽きない2人でしたが、そのうち席を立ってカフェを後にしました。
2人の会話を反芻しながら、かつて読み漁っていた数多のスピリチュアルブログが思い出されました。
大抵似たようなパターンで、かつて大失恋をしたとか、恋人ができてもいつも上手くいかないといった過去がある。それが引き寄せの法則などに出会ったことで好転し……
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かつての私のように悩めるあなたを救いたいの。
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要約するとこんな感じの方々がたくさんいました。
これを読んで「怪しい」と思った方は健全です。
でも、どん底にいると、こういうのも魅力的に見えてしまうんですよね。自分もこんな風に好転できるんじゃないかって。似たような成功体験がネット上にはゴロゴロ転がっていますから。
スピリチュアルにハマる時期って、かつての自分も含め、何かしら辛いことを抱えたときなんだと思います。純粋に好奇心から、という場合もあるでしょうけど、とにかく現状を変えたい思いが強い故に、のめり込んでいく人も多いのではないでしょうか。
何かに頼ることは決して悪くない。ただ、頼り先は見極めないといけないですね。スピリチュアルカウンセラーよりも先に、医療や福祉を頼った方がいい場合もあるかもしれません。
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目に見えないものを信じる心そのものは、特に日本人なら多かれ少なかれ持っている人は結構いるでしょう。
朝の情報番組で自分の星座が1位だとなんとなく嬉しい。厄年だから気をつけなきゃね、なんて会話が自然にある。ご先祖様のお墓には手を合わせる、等々。
スピリチュアルとは「日常生活に根付いていて、気分を少し前向きにさせてくれるもの」くらいの位置づけにしておくのがちょうど良いのかな、と私は思います。
度が過ぎてしまうと、効果のハッキリしないものに依存し、お金をつぎ込み続けることになってしまう。幸せになりたかったはずなのに、不幸のループから抜け出せない。
そして、それが不幸だと気付かず(もしくは見て見ぬふりをし)幸せだと思い込もうとするのが一番怖い。スピリチュアルに限らず、宗教とかマルチ商法にも同じことが言えるでしょうけどね。
カフェで遭遇した2人の背景はわかりませんが、全くの他人ごとながら、ハマりすぎてないといいな…などと思い、すっかり氷が溶けて薄味になったアイスカフェオレを飲み干したのでした。